ディーゼルエンジンの将来性

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 ディーゼルエンジンは燃料効率に優れ、トルクや耐久性の面でも優れており、従来から多くの用途に使用されてきました。その一方で排出される窒素酸化物や微粒子などが環境に与える影響が大きいことが知られるようになってきました。昨今のゼロエミッションやカーボンニュートラルなどの持続可能なエネルギーへの転換気運が高まる中、ディーゼルエンジンの将来性は厳しいものになっていくのでしょうか?

 自動車業界では、電気自動車(EV)や水素燃料電池車などのゼロエミッション車両への移行が始まっており、これによって排出ガスの削減や地球温暖化ガスの排出を減らすことが可能になっていくでしょう。また、各国政府の規制や環境への意識の高まりによって、ディーゼル車の規制が厳しくなり、一部の都市ではディーゼル車の規制区域が設けられるなど、ディーゼルエンジンの使用に制約がかかる傾向にあります。これは世界の鉄軌道の車両にも同じことが言え、現在世界の鉄軌道車両のおよそ半分が電気に置き換わっています。

 一方、ディーゼルエンジンはまだ特定の用途や市場で高い需要があります。例えば、大型トラックや建設機械などの重機では、ディーゼルエンジンが依然として一般的で、他に代わるものが無いため、これらの分野ではディーゼルエンジンの改良や効率化、排出ガスの削減に向けた技術開発が行われています。また、一部の国や地域では再生可能ディーゼル燃料やバイオディーゼルの普及が進んでおり、これによって従来の石油由来のディーゼル燃料と比べて排出ガスの削減が可能になっています。

 海上輸送や海上安全保障の観点から見ると、ディーゼルエンジンは将来的にも重要な役割を果たすと見込まれています。海上輸送は世界経済において極めて重要であり、貨物やエネルギー資源の運搬には大型船舶が利用されています。また、海上安全保障においても、海上保安庁や海上警察、海上自衛隊などの組織がディーゼルエンジンを搭載した船舶を利用しています。
 また、電気モーターで推力を得る電気船の研究や実用化への取組も一部で進んでいますが、現状ではバッテリーの容量重量比や安全性の観点から、ディーゼルエンジン発電機で得た電力で電気モーターを駆動するハイブリッド方式が先行しており、ここでもディーゼルエンジンは継続して利用されています。
 ディーゼルエンジンは燃料効率が高いという長所があり、補給が難しい海上環境においても長時間の運用が可能であり航続距離が長く有利です。さらに、トルクや耐久性に優れているため、大型船舶や軍艦などの高いパワーが求められる船舶においても依然として適しています。
 ただし、海上輸送や海上安全保障の分野においても、環境への配慮やエネルギー効率の向上が求められています。近年では、ディーゼルエンジンの排出ガス削減技術や再生可能燃料の利用など、より環境に優しい選択肢が開発されています。また、一部の国や地域では、海上輸送における排出規制が厳しくなっており、ディーゼルエンジンの技術革新が進んでいます。

 現在、ディーゼルに代わる燃料として水素やLNG(液化天然ガス)、アンモニアなどの研究が進められています。それらを利用するエンジンには従来のエンジンとは異なる特性や要件があります。たとえば、水素エンジンは高い燃焼速度を持ち、高圧での取り扱い技術が必要です。LNGエンジンは冷却システムが特に重要であり、アンモニアエンジンは特殊な排出ガス制御が必要です。そのため、これらの新しい燃料を使用するエンジンでは、それぞれの燃料特性に適した設計や技術が必要になります。

 ただし、それらの新しい燃料を利用するエンジンであっても、従来のディーゼルエンジンと共通する点が多くあります。
 水素やLNG、アンモニアを燃料としたエンジンも、基本的には内燃機関の原理を利用しています。つまり、燃料と空気を混合して燃焼させ、そのエネルギーを利用してピストンを動かすことで動力を発生させるという仕組みは共通しています。
 また、内燃機関の多くは、ピストン、クランクシャフト、バルブなどの基本的な機械部品を共有しています。したがって、新しい燃料のエンジンでも、これらの機械部品の多くは従来のエンジンと共通しているのです。
 そして熱エネルギーを制御するための冷却システムが必要であることも共通しており、従来のエンジンと同様に、水や空気を利用してエンジンを冷却することが一般的です。

 このように、ディーゼルに代わって新しい燃料が主流になっても、ディーゼルエンジンの基本原理、多くの機械部品や冷却システムなどのコンポーネントなどもそのまま踏襲されて、それらの保守整備、修繕の技術やノウハウの必要性はもとより、研究開発の重要性は今後とも高いレベルでの需要が見込まれています。

 総じて言えば、ディーゼルエンジン技術は電動化や水素化などの新しい技術に少しずつ置き換わっていく可能性が高いですが、一部の特定の用途や市場、特に船舶用エンジンでは、今後も依然として高い需要が予想されており、ディーゼルエンジン技術の改良や新燃料の開発などの環境対策を行うことで持続可能な形で利用され続けていくと考えられています。

※ 現状認識や将来の予測について以下の資料を参考にしました。
参考資料:「国際海運の 2050 年カーボンニュートラル達成に向けて」(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001484435.pdf

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